2000年2月号(Vol.53)英語の発音 上達のための学習計略
英語の発音
上達のための学習計略
英語発音コンプレックス。多くの日本人がかかえている問題ではないでしょうか。そこには何年も勉強したのに通じなかった、聞き取れなかったというある種の敗北感があるからかもしれません。今月号は、「発音」を特集しました。
なぜ通じないんだろう?
時代はグローバル・コミュニケーション。テレビに映し出される国際会議などでは、英語を母国語としない様々な人たちが通訳を通さずに英語で発言している姿を目にします。そしてその発音に関しては三者三様。要はコミュニケーション。・・・とは言っても、通じなくてはやはり話になりません。
英語を早くから始める理由のひとつに「正しい発音を身につけさせたい」と考えている人は少なくないでしょう。幼児期の脳は、音の微妙なニュアンス、リズム、イントネーションを聞こえた通り、正確にその音をプロデュース(再生)することのできる能力を備えています。私たちがよく悩まされる「l」と「r」、英語を得意とする人でもこの音を区別できる人はそう多くはありません。しかし、幼児クラスの子供たちは、わりとすんなりその音を再生します。驚くばかりです。
そもそも英語と日本語は、音の出し方がかなり異なります。口を開けたまま、「あいうえお かきくけこ …」と言ってみてください。「まみむめも」以外は結構音として伝わります。では、英語のアルファベットはどうでしょう。「ABCDEFG…」全くと言っていいほど何を言っているかわかりません。英語は、唇や舌、口の筋肉をたくさん使う言葉。しかし、私たちの聴覚器官、発音器官は10歳くらいで、それまでに耳にしたり、口にした言語でほぼ完成されてきます。ですから、それ以降の学習では非常に困難と言われています。
また、英語には強弱のリズムがありますので、たとえ一つひとつの音が正確でも、文章になった時に英語として聞こえないといったことも起きます。笑い話に、「掘った芋、いじんなー」があります。ちょっと怒り調子に言った方が下手な「WHAT TIME IS IT NOW?」よりも通じると言われるくらいです。
もし、ネイティブの発音に近づけたいのであれば、1週間に1回、教室の中だけのレッスンでは十分ではありません。お子さんが日本語を話せるようになった過程を振り返ってみればお分かりですよね。何度も何度も、そして毎日毎日、語りかけてやっと、「ママ…」と言えるようになるわけですから。マネをして、間違えて、だんだんと言葉を増やしていきます。英語にしても全く同じ。やはり、言葉学習の基本は、「たくさん聞く」、そして「マネる」です。
新システム“The Challenge”がスタート
ニッセイトでは、幼児から小学生低学年までのクラスではリスニングのチェックシートがあります。家庭で英語のテープやテレビ番組などを見たらその日のカレンダーにシールを貼るというものです。ところが、高学年になってくると一部の生徒を除いてあまりテープやCDを聞くことに熱心でなくなってきます。もう少し意識的にテープ学習に取り組むようにするにはどうしたらよいだろうか、そんな思案の末に始まったのが、“The Challenge”。
Let’s Go 2, Let’s Go 3 のテキストを使っている生徒を対象に、各ユニット(単元)から4つの挑戦項目を設けました。
1.Dialogue(会話文)
2.歌
3.フォニックス 単語
4.フォニックス 文
がそうです。それぞれの項目を、テープやCDと同じように言えたら合格。4項目を全部クリアするとご褒美、というシステムです。まだ始まったばかりですが、子供たちは熱心にチャレンジしています。そして、発音も明らかに上達を感じます。是非、これからもテープやCD教材を有効利用していって欲しいと思います。
さて、GE(総合英語)クラスの講師、石山先生、井本先生に発音学習の体験談を寄せていただきましたので、皆さんも参考にしてみてください。
ショックから始まった発音の自己チェック
石山正文
英語は中学1年から始めましたが、あるアメリカ人と会話する機会を持つまで、発音はあまり意識していませんでした。ところがそのアメリカ人に話し掛けても一向に通じるところが少なく、相当ショックを受けました。この出来事で、自分の発音の学習に問題があることに気づき、英語発音の教材(テープ付)を買い、英語の発音の自己修正を始めました。修正の仕方は、ダブルカセットテープレコーダーの片側に教材テープを入れ、単語を一語聴いたら、もう片方にあるテープに指導書通り発音し、それを録音して、自分の発音を聴き、また教材用テープを聴くということでした。これによりある程度、単語の発音に自信が持てるようになりました。
英文のイントネーションに関しては、NHKラジオの会話番組を利用しました。まず、テキストの会話を全て暗記し、テープから流れてくる会話とほぼ同時に意味を考えながら発話する訓練(これはシャドウイングと呼ばれています)を続けました。
日本語にどっぷり漬かった生活をしてきた私たちにとって、普段から積極的に、そして意識的に英語を注意して聴いたり、口に出して言ったりすることがとても大切に思います。
【i】= (イ+エ)/2
井本さと子
小6の頃、父の勧めもありNHKの英会話の番組をよく見ていました。あまり勉強という意識は無く、聞きなれない何か変わったことばの響きに興味を持ち始めたのはこの頃でした。中でも certainly ということばの最初の「サ」でも「ス」でもない音が非常におもしろく、何回も口まねしたことを覚えています。
中学に入り、ある時先生に、「give, liveの i の音はカタカナの「イ」とは違います。(イ+エ)/2と考えましょう」と言われ、「何だこの変てこな式は!」とびっくり仰天。しかしこの「(イ+エ)/2」というそれまでには無い発想で【i】という音を改めて聞いてみると、「イ」とは全く違う別の音として頭の中で分類され、音に対する意識も変わってきました。
たくさんの音を聞き、何回もくり返して練習することはあたり前としても、私は耳の良い方ではないので、それだけでは外国語特有の音は身につきません。口の形、舌の位置、息を出す場所など、スポーツやダンスのフォームを覚えるのと同じように、口全体の筋肉を鍛え、慣らすこと、そして日本語には無い個々の音に対する自分なりのイメージを持つことを大切にするようにしています。
これって英語?
シャッターチャンス ~shutter chance(?)~
「今のいいシャッターチャンスだったのに!」なんて具合に何気なく使っているこの「シャッターチャンス」という言葉。“shutter”も“chance”も共に英語ですが、“shutter chance”という英熟語は実は存在しないのです。「シャッターチャンス」を英語で言うには、“perfect moment on film”とか“the right moment to take a picture”などと、つまり「写真に収めるのに絶好の瞬間」というふうに説明するしかないようです。 「シャッターチャンス」という言い回しの方がいかにもピンとくる感じがしますけどね。
編集後記
Strike while iron is hot.
(鉄は熱いうちに打て)
時期を逸すると効果が半減したり、無くなったりするという意味です。