1999年11月号(Vol.50)マザーグース -わらべ歌の不思議な魅力ー
マザーグース
―わらべ歌の不思議な魅力―
英語の学習というと英単語を覚えたり、言い回しを暗記したりとちょっと構えてしまいませんか。でも、遊び歌なら楽しく、そしてあまり無理もなく覚えられるかもしれません。何百年と歌われ続けてきた歌には、私たちの心を魅了する何かがあります。今月号は、マザーグースを特集してみました。
マザーグースって何?
Star light, star bright
First star I see tonight,
I wish I may,
I wish I might,
Have the wish I wish tonight.
映画『ピノキオ』の一場面。ゼペットさんはピノキオを完成させた夜、空に輝く星を見つけて願いごとをします。上記は、そのときのことば(詩)です。とても印象に残る詩で、自分でも何度か反復してみました。後日、マザーグースの本のページをめくっていた時に、再びその詩を目にしました。「これもマザーグースだったのか!」 マザーグースの中には、日本語に訳されて歌われているものも少なくありません。『メリーさんの羊』、『ロンドン橋』、『大きな栗の木の下で』、『きらきら星』などがそうです。
マザーグースという名の由来は、あるロンドンの出版社が18世紀に、『Mother Goose’s Melodies』(がちょうおばさんの歌)を出したことによります。それ以来、英国古来の伝承童謡集の通称として呼ばれています。ほとんどが作者不明で、口から口へと歌い継がれてきました。それは、子守り歌であったり、遊び歌であったり、ことば遊びであったり…。もっともイギリスでは、ナーサリーライムと称されることが多いようです。お子さんの教材を探していて、そのタイトルを目にされた方も多いのではないでしょうか。口伝えに広まった歌ですから、地方によりリズムが異なったり、言い回しが違ったりしているものも少なくありません。マザーグースは子どもたちばかりでなく、大人にも広く親しまれています。ですから、映画や雑誌にもたびたび顔を出します。英語文化を理解する上で「聖書」「シェイクスピア」「マザーグース」の三つが欠かせないと言われているくらいです。
ところで、皆さんはマザーグースをどのくらい知っていますか。チェックしてみましょう。全部歌えたら3点、途中まで歌えたら2点、名前を知っていたら1点。さて、あなたの合計点数は?
マザーグース愛唱度チェック!
□ Humpty Dumpty
□ Hot Cross Buns!
□ Pat-a-cake, Pat-a-cake
□ Two Little Dicky Birds
□ Hush-a-bye, baby
□ Hush, Little baby
□ This Little Pig Went To Market
□ Ring-a-ring o’ roses
□ Twinkle, Twinkle, Little Star
□ London Bridge
●16点以上 立派なマザーグースファンです。
●15点~5点 英語が好きでお子さんの家庭学習にも積極的では?!
●4点以下 難しい英語ばかりを勉強してきているか、逆に英語に対して苦手意識を持っているのでは?!
見直される日本のわらべ歌
日本にもわらべ歌はたくさんあります。しかし、残念ながらあまり歌われなくなっているようです。その理由として、伝承してくれる人が身近にいなくなってきていることや、子どもたちの遊びの変化などが考えられます。胎教音楽といいながらクラシック音楽をCDで聴かせることに熱心であるにもかかわらず、子守り歌は歌ったことがない、そういった方もいらっしゃるかもしれません。しかし、赤ちゃんに一番大切なのは、目を見ながら歌いかけたり、スキンシップを取りながら遊んであげることではないでしょうか。
最近、日本のわらべ歌が幼児教育の現場で復活の兆しがあるといいます。その背景には、情操教育上の大きなメリットが期待されるからだそうです。先日の朝日新聞に、わらべ歌を教育に導入した先駆者、羽仁協子先生の言葉が載っていました。「わらべ歌教育を始めたとき、まず驚いたのは、お遊戯は絶対に一緒にやろうとしなかった子が、自然に輪の中に入ってくることでした。わらべ歌が他の言葉と決定的に違うのは、子ども自身が作ってきたものだということです。それが何百年という伝承の中で磨かれてきています。子どもは敏感ですからその力や純粋さをすぐに見分けられるのだと気づきました(後略)」とありました。実際、暴れてばかりいた子どもに落ち着きがでてきたり、仲間同士で遊ぶことができるようになったり、また音や言葉に対する感受性も目に見えて育ってくると報告しています。
ニッセイトの幼児科でも、マザーグースを積極的に取り入れています。といっても数多くということでなく、ひとつひとつの歌にじっくり時間をかけ、大きな声で一人でも歌えるようになることを目標にしています。
日本テレビの番組撮影で、別所哲也さんやTake 2、それに魚住アナウンサーがニッセイトの幼児クラスを訪れたとき、マザーグースの「Two Little Dicky Birds」をみんなで一緒に歌いました。タレントさんたちもすぐその歌を覚えてしまい、とても楽しそうに歌っていました。演技抜きで楽しんでいました(?!)。やはり、マザーグースにも、そんな人を引き付ける魔法が隠されているのかもしれません。
親子でマザーグースを歌うのも楽しいひとときとなることでしょう。子どもたちの遊びでは、テレビゲームが主流になりつつある今日、スキンシップの多い手遊びわらべ歌などの活用意義はとても大きいと思います。「この歌、母さんとよく一緒に歌ったなー」そんな風にマザーグースが、お子さんの思い出に残っていったら素敵ですね。
マザーグースの教材
マザーグース(またはナーサリーライム)は、いろいろな出版社から数多く出ています。自分で手にして気に入ったのを買うのが一番ですが、どれがいいのか分からないという人のためにお勧めをご紹介しましょう。
◆『マザーグースとあそぶ本(CD付き)』
(ラボ教育センター)3981円(税別)
*書店取扱あり
和訳、楽譜、それに振り付け等がイラスト入りで解説されています。
◆『英語のあそびうた』
(評論社)
1748円 カセットテープ 2200円(税別)
*書店取扱あり
和訳はもちろん、その歌がどんな風に遊ばれているのかなどの解説があります。
◆ビデオ版『マザーグース英語のうた』
(いずみ書房)
全6巻 各巻2718円(税別)
*通販 0120-48-3601
1曲ごとに振り付けや遊び方を収録。歌詞は字幕スーパーで表示されます。
これって英語?
ナイーブ ~naive~
「秋ってもの寂しくなるよね。あたしって結構ナイーブだしー」なんてセンチメンタルになっている人はいませんか? ところでこの「ナイーブ」ですが、英語で“naive”と言うと、「純真な」という意味もありますが、どちらかというと「未熟な」といった否定的な意味で使う場合が多いのです。私たちが言う感覚での「ナイーブ」は、英語では“sensitive”と言います。ナイーブな人に“You are naive!”なんて軽々しく言って傷つけてしまわないようにね。
編集後記
What is learned in the cradle is carried to the tomb.
(雀百まで踊り忘れず)
直訳は、ゆりかごの中で覚えたことは墓場まで運ばれるということです。ゆりかごの中、そこは安心できるところであったり、寂しいところであったり…。泣くことで、自分の思いを探り当ててもらえたり、いつも自分の思い通りにならないということを学んだりもします。成長した今も、母の歌ってくれた子守り歌はいつも心のどこかにあるような気がします。多少、音痴であっても(?)やっぱり子守り歌は、お母さんの生の声がいいですね。