2007年10月号(Vol.138)英語が通じた!!
英語が通じた!!
オーストラリアホームステイ Part 1
この夏8名の小学生がオーストラリアのパースにホームステイをし、現地校に通いながら現地の子どもたちと交流を深めてきました。特に印象深かったのは、英語が通じる喜びを感じ、知っている語いを使ってコミュニケーションを楽しんでいる参加者の姿でした。こんなことがありました。帰りの飛行機で機内食を食べている時のことです。岡島尚志君(小4)は周りの人のトレイと見比べ、自分のトレイにパンが無いのに気付きました。彼は早速、配られていたメニューをチェック。本来はあるべきものと確認するとすかさず乗務員の人に”Excuse me, you forgot my bread!”と伝えました。すぐ近くにいる引率の私に頼ることもありませんでした。その堂々とした姿に、この8日間で培った自信を見ることができました。
今月は、企画の誕生と子どもたちがどのようにオーストラリアで過ごしてきたかを特集します。また来月号では参加者のアンケート結果や感想文の紹介を予定しています。
オーストラリアの企画が誕生するまで
昨年の夏、ニッセイトに通う2人の兄(現小5)、妹(現小4)がオーストラリアに行き、それぞれ別々の家庭にホームステイをしてきたという話を聞きました。この体験談を私たちの中だけに留めておくのはもったいないと考え、昨年のニッセイトニュース10月号で特集を組みました。その反響は大きく、「私も行ってみたい」「行かせてあげたい」「ニッセイトの先生が引率してくれませんか?」という声が多く聞かれました。そこでもう少し具体的に皆さんの要望を把握したくアンケートを実施させていただきました。結果は私たちの予想以上でした。回答者の6割近くの人がホームステイに関心を持ち、条件が合えば参加させたい人は1割強、検討したいという人は4割を超えていました。この結果を受け、私たちは実施に向け企画の検討を始めました。私たちがこのプログラムに求めたことは以下の3点です。
1.現地の学校に通う
2.文化交流を行う
3.ホームステイを体験する
海外ホームステイではアメリカやカナダも人気です。しかし、8月は夏休みでほとんどの学校は休校です。オーストラリアは季節が冬で日本と逆になりますが8月は通常の授業が行われています。治安が良く、幼稚園から小学校までが同じ敷地内にあることも条件に入れました。そういう中で候補に挙がったのがオーストラリアのパースにあるRegent
College(生徒数250名) でした。募集対象は4歳~中1までとし、小3以下は親子参加を原則としました。最少催行人数を10名とし、3月より募集を開始しましたが、いざ申し込みとなるといろいろな問題が生じてきました。日程の調整、保護者の方は行かせてあげたいと思っていても生徒本人が頑なに拒否…。最終的には、最少人数に満たない8名でしたが、旅行会社と協議し実施を決めました。そして、私(諸田)と女性添乗員が引率させていただきました。
パースに到着
パース空港に着いた私たちは、現地コーディネーターに迎えられ市内観光を楽しみました。その中でも子どもたちが一番喜んだのは海岸遊びです。季節は冬なのですが、あまりに青くきれいな海に子どもたちは吸い寄せられていくようでした。30分も経たないうちにズボンやスカートをびしょ濡れに…(笑)。
さて、下校時間に合わせて私たちは学校に向かいました。そこでホストフレンドとご対面。しばらくして、ホストファミリーが車で迎えにきてくれました。ホストファミリーとの対面は緊張とワクワク感が漂いながらも感動的でした。そして、子どもたちは挨拶の後、それぞれの車でホストファミリーの家庭に向いました。
2日目
ホームシックになり「もう帰りたい」という生徒さんが2人程でてきました。幸い一軒のホストファミリーが2人の女の子を一緒に滞在させてくれることになり、2人とも「それならば、がんばる」と心を落ち着かせることができました。
午前8時を過ぎるとスクールバスや車で各方面から子どもたちが登校してきました。中には学校まで車で片道1時間以上かかるという生徒さんもいました。
8時半、全校生徒が音楽室に集合し朝礼で私たちは紹介されました。参加したのは、5、6年生の複式学級でした。参加者の学年が同じだったため、全員が同じクラスに入って授業を受けました。
この日の最初の授業は文化交流。まずはオーストラリアの子どもたちが、プロジェクターを使ってオーストラリアの紹介をしてくれました。次は私たちの番です。私たちが用意したのは、「海」と「小さな世界」の歌、習字、そして折り紙です。まずはひとり一人の自己紹介。これは日頃の学習成果がよく出ていました。大勢の前で堂々と自己紹介をする姿はとても頼もしかったです。そして、歌、習字、折り紙と続きました。オーストラリアの子どもたちにとって筆で文字を書く習字はとても興味深かったようです。「書き順が違うんだけど…?」とため息をこぼしながらも一生懸命、筆の持ち方や書き方を教えている日本の子どもたちの姿もまた印象的でした。
折り紙で私たちが用意したのは「おすもうさん」です。作り終えた後に紙台の土俵で戦わせます。テーブルをたたきながら、「のこった~、のこった~!」と勝負。とても楽しい文化交流となりました。
お昼の時間になると中庭にお弁当を持った子どもたちが集ってきます。ベンチや地べたに座ってサンドイッチを食べ始める子、リンゴをかじりながらお友だちと追いかけっこをしている子といろいろです。日本の給食とあまりに違うため驚いた子どもたちも多かったようです。
午後は体育の授業でオーストラリアの子どもたちに大人気のクリケットという球技。ルールが良く分からないながらも大いに楽しんでいたようです。
3日目
学校側の特別な配慮で日本の子どもたちは朝からお弁当を持ってホストフレンドと動物園に行きました。カンガルーやコアラ、オランウータンなど動物見学もさることながら、子どもたち同士が自分たちで行きたいところを話し合いながら園内の散策を楽しみました。学校に戻ってからはブーメラン作りとオーストラリアのクッキー作り。子どもたちは日ごとにオーストラリアの生活に馴染んでいきました。片言の英語も聞こえてきます。身振り手振りを含め、自分の知っている単語を駆使してコミュニケーションを取ろうとしている姿はとても感動的でした。
4日目
この日は偶然にも運動会。朝から近くにある芝生一面の広い公園で運動会が行われました。クラスは4色に分かれてチーム対抗戦。運動会といっても日本と違い各学年、ほとんど徒競争ばかりでした。日本の子どもたちも特別枠のレースに参加。途中、雨が一時的に降ったりもしましたが終日野外で楽しい時間を過ごすことができました。
5日目(土)、6日目(日)
週末は、それぞれホストファミリーといろいろな過ごし方をしたようです。プールに行って泳いだ。海岸で遊んだ。釣りに行った。ボーリングをした。残りわずかな時間を満喫できたようです。土曜日の夜には私たちとホストファミリーが学校に集まり、さよならパーティーが行われました。日曜日の夜、飛行機を待つ空港でホストファミリーとお別れをし「あ~、もっといたいな~」と寂しそうに呟いていた子どもたちの声が今も耳に残っています。
バディシステム
現地校では日本人の子供たち一人ひとりに対してバディ(パートナー)が決められていて、学校にいる間はいつも世話をしてくれます。教室の移動やトイレ、食事などいつも一緒です。授業中も先生の指示に何をどうしたらよいのか当惑していても、隣でそのバディがいろいろ教えてくれます。バディはホストフレンドでもあります。日本の子どもたちがオーストラリア滞在中に寂しい思いをほとんどすることがなかったのもこのバディシステムのお陰かもしれません。
参加者は、「英語が話せて楽しかった」「聞くのはわかったけど言えなかった。もっと話せるようになりたい」など、それぞれの思いを胸に秘め帰国したのではないでしょうか。この体験が将来、どのように芽を吹き、どんな花を咲かせることになるのかとても楽しみです。
編集後記
Spare the rod and spoil the child.
(可愛い子には旅をさせよ)
「海外の全く知らない人の家、しかも日本語が通じない…」。
保護者の方にとってもお子さんを参加させるには不安もきっと大きかったに違いありません。しかし、この大冒険を乗り越えた子どもたちが得たものは私たちの想像以上ではないでしょうか。実際、帰国後、クラスに参加する子どもたちの目の輝きが違うと担当講師は感嘆していました。「いつかこんな体験をさせてあげたい」。そう思われている保護者の方も多いのではないでしょうか。そのためも今からいろいろと準備をしておきたいですね。